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ENVIRONMENT

「服をたくさん持つことがおしゃれではない」。“普通のバイヤー”じゃなかったからこそ気づけた「服を大切にする精神」

May 13,2017

10年程前に日本のファッション業界に進出してきたファストファッション。低価格で流行の服が買えるからと若者を中心に人気が高まり、ファッション界において無視できない存在となったと言っても過言ではない。

そんなファストファッションに対して違和感を感じ、行動に移している女性がいる。ラフォーレ原宿に店舗を持つLEBECCA boutique(レベッカブティック)でディレクターとバイヤーを務める赤澤える氏だ。

彼女は、特に服が生産される背景を考える訳でもない「一般的な女の子」のファッション感覚しか持っていなかったが、その考え方を大きく変える“ある出来事”が、古着の買い付けで訪れたLAで起きたという。

「ファッション大好き!楽しい!という一般的な感覚」しかなかった時代

 ファッションブランドやのプレス、カメラマン、ディレクターなど、ファッション好きの若者なら憧れるような仕事をしてきた赤澤氏。今でこそ「服を大切にできる人を増やす」という目的を持ちながらブランドの運営をしているが、それまでは服が大好きでも、それらの生産背景に目を向けたことはなかった。

Photo by Noemi Minami

“「ファッション大好き!楽しい!」という一般的な女の子が持つ感覚くらいしかありませんでした”

 彼女のファッションに対する感覚は「ハイブランドに憧れるのは当たり前、手の届きやすい安くて可愛いアイテムを取り入れるのは常識」という、多くの若い女性向けのファッション誌が指南してきたおしゃれの価値観と似たようなものだったのだ。

人生を変えた、LAでの買い付けで“出会ったもの”

 古着を買い付けるために足を運んだLAの倉庫で彼女が見たのは、“普通のバイヤーなら喜ぶはずの光景”だったと赤澤氏は振り返っていた。そこに広がっていたのは「山積みにされた“布の塊”」で、彼女の心は痛んだ。

“気が遠くなりそうなほど広い土地に自分より背の高いその山がひたすら連なっている景色に、すぐに吐き気がして涙が止まらなくなり、膝をついて大泣きしてしまいました。怒りなのか悲しみなのかその時は判断がつきませんでしたが、とにかく強い感情に揺さぶられて、「服がこんな結末を迎えているなんてひどすぎる。もう服を作るのなんてやめたほうがいい」としばらく1人で泣き続けました”

Photo by @l_jpn

 「ゴミの山」のように見えてしまった服の山。それを見て彼女が気づいたのは「服をたくさん持つことがおしゃれではない」ということだった。世界で服が大量に生産されていることは周知の事実かもしれないが、その現実を目の当たりにしたときに味わった衝撃は彼女を大きく変えることとなる。そのような倉庫から古着を「救い出」し、「意味のあるもの」として大切に着てくれる誰かに届けることを自分の使命にするようになったのだ。

「もう服を作るのはやめよう」と思ってもショップを続ける理由

 レベッカブティックで扱われているアイテムの7割は赤澤氏が「救ってきた古着」、残りの3割がオリジナルの服だ。LAの倉庫で大量生産された服が飽和状態になっている現実を知り、一時は服作りをやめようと思った彼女だったが、消費者からの「レベッカブティックの服ならハイブランドじゃなくても大切にできるし、したいと思える」という肯定的な意見に後押しされた。そうして今は「大切にしてもらえる服の届け方は私が続けなくてはならない」と考え、「大切にしてもらえる服作り」を行なっている。

 彼女の作るオリジナルの服の特徴は、それらにつけられた名前とストーリーにある。「プリドーンを見つめるハイネックフリルワンピース」や「ブーランジェリーで会ったワンピース」など。オリジナルの服に込められたストーリーは彼女のインスタグラムで読むことができる。

プリドーンを見つめるハイネックフリルワンピース
Photo by @l_jpn

ブーランジェリーで会ったワンピース
Photo by @l_jpn

 「服を簡単に捨てて欲しくないし、もっと大切に愛して欲しい」という願いを込めて、名前や物語をつけた服を販売しようと赤澤氏が提案したのだ。それにはLAの倉庫を初めて訪れる前から取り組んでおり、関係者に笑われたり、恥ずかしいと言われたりすることもあったが、レベッカブティックの服の持つストーリー性が消費者の「共感」を得ることにつながり、ブランドの価値そして彼女がディレクションする最大の理由となった。

身内だけで盛り上がらず、どれだけ「ポップ」に人を巻き込むか

 ストーリー性で消費者の「共感」を呼び、新しい服を出すたびに即完売したり追加で受注生産したりしているレベッカブティック。消費者には赤澤氏の深い思いや考えがどの程度伝わっているのだろうか。レベッカブティックの服のストーリー性に共感していても服の生産背景や大量生産の問題に興味のない消費者にそれらの問題を考えてもらうためには、堅苦しくなくさらなる共感を生むようなアプローチが必要だ。

“特に何も考えていない人が振り向きたくなるようなアプローチを仕掛けることが必要だと感じています。説教じみた演説は誰も聞いてくれないし、突然真面目に難しい説明をしても誰も振り向かないです。罪悪感を植え付ける手法だと理解者の人数は増えづらくムーブメントにはなりにくいものだと思うので、どれだけポップに人を巻き込むかが今後重要なキーになると思います”

 彼女はファッションレボリューションウィークに合わせ、モデルなど各界の人を巻き込み、ファッションの裏側に目を向けるきっかけを目指した個展『うらがえし展』を4月末に開催した。エシカルファッションプランナー鎌田安里紗氏と企画・構成し、撮影は赤澤氏が行なっている。

 これにより、たとえ小規模であってもSNSでフォローしてくれる人、ファッション関係者、仲の良いモデルやミュージシャンが自然と振り向いてくれ、やっと自分事にできたと感じたという。彼女が大切にしたのは、「身内だけで盛り上がるのではなく、何もわからない人に少しでも振り向いてもらえるようにすること」だった。

エシカルな文化を原宿から発信するセレクトショップ「ギブライフ」内で開催した『うらがえし展』。

 「買い付け先で受けた衝撃」の投稿に多くの反響があったのと同様に、ファッションレボリューションでは彼女に会うためにやってきた人も少なくなかった。彼女のインフルエンサーとしての影響力が背景にあったのはもちろんのこと、社会問題に興味のある人は私たちが思うよりも多いのかもしれない。

 服が大量に作られていることは誰もがなんとなく知っているが、自分のことのように考えてもらうためには何かのきっかけが必要だ。さまざまにアプローチを変えて訴えていけば、彼女がふとしたきっかけで「大量生産される服の問題」を考え始めたように、社会にはびこる問題に興味を持つ人が増えていくと信じている。

撮影協力:GIVELIFE(ギブライフ)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-18-21
TEL:03-3404-1348
www.givelife.jp

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赤澤える

Instagram @l_jpn

Twitter @ERU_akazawa

All photos by Noemi Minami unless otherwise stated.
Text by Shiori Kirigaya
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